財産開示手続き
財産開示手続きについてのメモの続きです。
裁判所から財産開示手続きの呼出状が届いた場合には、弁護士にご相談ください。
5 期日が開始されると開示義務者は、財産開示期日に出頭し、宣誓の上、日々の暮らしに必要な生活必需品を除き、債務者の財産について陳述しなければなりません。
6 財産開示期日には、原則として、裁判官が開示義務者に質問することになります。申立人も裁判所の許可を得て質問をすることもできますが、債務者の家族の収入等についての質問等は、債務者の財産調査に関係ないので、そのような質問をすることは認めれられません。
7 なお、債務者が、期日に出頭できない場合には、裁判所の判断により変更されることもあります。
8 財産開示の申立ては、3年以内に財産開示期日でその財産を陳述していた場合には、原則、財産開示手続きを実施する旨の決定をすることはできません。ただ、債務者がその期日で一部の財産を開示しなかった場合や、財産期日の後に新たな財産を取得したときや、財産開示期日ののちに債務者が退職した場合には、例外的に財産開示手続きを実施する旨を決定をすることができます。
9 債務者が、呼び出しを無視したり、出頭しても宣誓の上で虚偽の陳述をしたり、宣誓を拒絶した場合には、刑事罰(6月以下の懲役または50万円以下の罰金)を受ける可能性があります。
財産開示手続きについてのメモ
財産開示手続についてのメモです。
手続の概観についてまとめてみました。
裁判所から、財産開示手続きの呼び出し上が届いたような場合には、弁護士にご相談ください。
1 財産開示手続きとは、確定判決などを有している債権者の申立てによって財産開示の実施決定をし、裁判所が債務者を裁判所に呼び出して、裁判所が直接債務者の財産情報を確認するというものです。
2 以前は、確定判決を有している債権者のみしか申立てはできませんでしたが、現在は仮執行宣言付支払督促、執行証書等でも申立てを行うことができるようになっています。
3 申立を行うためには強制執行又は担保権の実行における配当等の手続きにおいて、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかった場合、又は、申立人が通常考えられる調査をして判明した財産に対して強制執行を実施したとしても、申立人が完全な弁済を得られないことが必要になります。
預金を差し押さえて、単独で取立た場合には、配当等の手続きに該当しないため注意が必要になります。
4 財産開示期日が指定されると、申立人に期日の呼び出しがなされ、債務者には呼出状とともに期限をふして財産目録を提出するよう通知がされる。
信用情報の開示の仕方
信用情報について、以前は、信用情報機関に直接行ったり、郵送等の手続きを取らなければ開示できませんでしたが、今は、だいぶ便利になり、インターネット上で自分の情報が確認できるようになりました。
信用情報は、信用情報機関が保有している借入やクレジットカードの利用、返済等に関する情報になります。
信用情報機関は、CIC、JICC、全国銀行協会個人信用情報センターの3つがあり、それぞれが信用情報を保有しており、その開示の方法もことなります。
CICは、インターネット上での開示と、郵送での開示の2種類の方法があります。
インターネット上で開示を行うためには、クレジットカードか携帯電話のキャリア決済を利用できる等、いくつか条件があるようですが、かなり簡易に、素早く信用情報の開示ができるようです(詳しくはこちら)。
JICCの場合は、スマホアプリを利用する方法、郵送で行う方法、窓口で開示を行う方法の3種類があります。
スマホアプリを利用する場合、CICの場合と異なり、手数料についてはコンビニでの支払いもできるようです。
こちらの手続きについても、JICCと同様、かなり素早く信用状の開示ができるようです(詳しくはこちら)。
全国銀行協会の個人信用情報センターについても、郵送、インターネット上で開示の手続きができるようです。
インターネット上の手続きについては、オンライン上で完結していますが、データのアップロードまで1週間から10日程かかると記載されているので、CIC,JICCと比べると情報の開示には少し時間がかかるのかもしれません(詳しくはこちら)。
いずれの信用情報機関もインターネット上で開示の手続きができるようになっており、かなり便利なったと思います。
ご不明な点等ございましたら、お気軽に弁護士法人心へお問合せください。
ペアローンと住宅資金特別条項について
個人再生においては、住宅資金特別条項を定めることによって、住宅ローンについてはそのまま支払いを継続する等して、住宅が競売等にかけられることを避けることができます。
ただ、住宅資金特別条項を定めるためには、いくつか条件があり、その一つに、住宅ローン以外に住宅に抵当権がないことというものがあります。
一方、住宅ローンの組み方の一つにペアローンというものがあり、これは、夫婦で住宅を共有し、夫と妻がそれぞれ別々に住宅ローンを組み、別々に抵当権を設定するというものです。
このペアローンの場合、夫が個人再生をすると、妻の住宅ローンの抵当権が、住宅ローン以外の抵当権に該当してしまい、住宅資金特別条項を定めることができないのではないかとの問題点が提起されています。
このような場合であっても、夫と妻が同時に個人再生を申立てる場合には、実質的にみると一つの申立ての中で、住宅資金貸付債権を取り扱うことになるので、夫婦の再生計画が同時に認可されることにより、それぞれの住宅資金特別条項の効力により担保権の実行が阻止されることになり、住宅資金特別条項の利用が認められるとされています。
ただ、ペアローンの場合で、一方のみの申立てで住宅資金特別条項を定めることができるかどうかについては、まだ、運用が定まっていない部分もあるようです。
なにはともあれ、ペアローンで住宅資金貸付条項を付した個人再生には、いろいろと難しい問題がありますので、まずは弁護士にご相談ください。
仮失効宣言付支払督促が裁判所から届いたら
1 弁護士に相談を
仮執行宣言付支払督促が、裁判所から届いたら、できる限り早く弁護士にご相談ください。
この支払督促が届いて、2週間以内に何の対応もしないと、債権者からの申立てにより、仮執行宣言が付され、再度、裁判所からの書類が届きます。
これに対しても、何も対応しないまま2週間が経過すると、仮執行宣言が確定し、判決が取られたのと同じ効果を生じることになるので、債権者から土地や預貯金、給与等を差し押さえられてしまうこともあります。
全く理由がないものであったとしても、一旦、仮執行宣言が確定して判決が取られ、給与等が差し押さえられてしまうと、その差押等を止めるのは非常に難しくなります。
支払督促とは,金銭の支払又は有価証券若しくは代替物の引き渡しを求める場合に限り認められる手続きで,債権者からの申し立てにより,債権者の請求に理由があると認められる場合に,裁判所が支払督促を発する手続きです。
これは,異議の申立てがなされなければ,裁判を行うよりも短い手続きで判決を得るのと同様の効果を得ることができるので、便利な手続きではあるのですが、一方で、簡易に判決を得るのと同様の効果を得ることができるので、詐欺等に利用されることもあります。
そのため、裁判所以外のところから届く、まったく理由がない請求書等は無視することが正解のことが多いですが、裁判所から仮執行宣言付支払督促が届いたような場合には、早期に弁護士に相談し、裁判上の手続をとっていくことが必要になります。
任意整理
弁護士に頼む債務整理の方法としては,任意整理,個人再生,自己破産があります。
個人再生と自己破産は,法律に規定された方法になりますが,任意整理は特に法律に規定された手続きではありません。
具体的にいうと,債権者との間に弁護士が介入し,返済方法等について各債権者毎に個別に交渉していき,返済計画を作り直すというものなります。
この手続きでは,自己破産や個人再生と違い,裁判所を介することがないので,債務の減額等を債権者に強制することはできず,過払金等がない場合には,残債務の減額等は受けられないことがほとんどです。
ただ,利息等をカットしてくれることは多いので,毎月の返済額は債務額を返済回数で割った金額になることが多いです。
そのため,毎月の返済額を減らすためには,支払期間を延ばしてもらうことになります。
任意整理の場合,通常は5年程度での支払いを求められることが多く,この期間での支払いが難しい場合には,自己破産や個人再生等の手続きを検討することになります。
ただ,債権者によっては,5年以上の長期の分割に応じてくれることもあるため,場合によっては6から8年程度の期間での分割の支払いを求めて債権者と交渉していくこともあります。
任意整理の場合は,互いに合意することが必要なるので,長期の分割に応じてくれるかどうかは債権者次第となります。
以上のとおり,任意整理の支払額については,債務額を5年,60回で分割した金額になることが多いです。
ただ,どうなるかは債権者次第ではありますので,詳しくは弁護士にご相談ください。
自己破産の免責
1 免責とは?
自己破産の免責とは、破産手続きにおける配当等の後でも残ってしまった債務について、支払義務を免れるものになります。
免責は、裁判所が免責の許可決定をして、官報で公告され、2週間以内に債権者等から抗告されずに確定した場合、もしくは、抗告されたが、それが棄却され確定した場合に効力が生じます。
個人の方の破産の場合、借金等の支払義務の免除を求めて行うことが多いため、免責の許可を得、それが確定することが破産の目的となります。
2 免責不許可事由
では、どのような場合に免責が許可されるのでしょうか。
破産法は、免責の不許可事由がない場合には、免責許可の決定をするとしています。
そのため、免責不許可事由(①財産の価値を不当に減少させる行為、②手続遅延目的での不当な債務負担行為、③不当な偏波弁済、④浪費、賭博その他の射幸行為、⑤詐術による信用取引、⑥帳簿等の隠滅、偽造、変造行為、⑦虚偽の債権者名簿提出行為、⑧裁判所等に対する説明義務違反、⑨管財人等に対する不正な手段による職務妨害行為、⑩免責許可決定等から7年以内の免責許可の申立て、⑪破産法上の義務の違反行為)がなければ、免責は許可されることになります。
ただ、免責不許可事由があったとしても直ちに免責が不許可とされるわけではありません。
免責不許可事由があるような場合でも、裁判所は破産手続きに至った経緯等を考慮し、免責を許可することができるとされています。
そのため、浪費やギャンブルによって過大な債務を負担してしまったような場合であったとしても、そのことについて真摯に反省しており、今後、ギャンブルや浪費等をしないと見込まれるような場合には、充分、免責が許可される見込みがあるといえます。
3 非免責債権
また、免責が許可されても、税金や悪意に基づく不法行為の損害賠償債権等、免責の効力が及ばない債権もあります。
そのため、これらの債権については、免責が許可されたとしても支払っていく必要があります。
詳しくは債務整理に詳しい弁護士にご相談ください。
個人再生の期間
今回は、小規模個人再生にかかる期間について説明しようと思います。
個人再生を弁護士に依頼した後は、申立の準備、申立て、開始決定、再生計画案の提出、債権者の書面決議、裁判所の認可決定、認可決定の確定の順序で進んでいきます。
個人再生の申立てでは、債務の内容、収支の状況、財産の状況について、資料を付して裁判所に提出する必要があります。
申立の準備には、2か月から3か月間の収支の状況を作成しないといけないこともあり、3か月から半年ほどかかることが多いです。
ただ、状況によっては急いで申立てをしないといけないこともあり、資料等が揃うのであればもっと短い時間で申立の準備を終えることもあります。
申立ての準備が終わったら、裁判所に個人再生の申立てを行います。
申立てを行うと裁判所が資料を精査し、開始決定を出すにあたり、不足する資料はないか、追加で確認すべきことがないかを検討し、あれば申立代理人に補充すべき事項を連絡します。この補充事項に回答する、もしくは、不足する資料や追加で確認すべきことがない場合には、開始決定がなされます。
通常この期間は1か月から2か月程度かかることが多いです。
開始決定がなされると、減額された再生債権をどのように支払っていくかを定めた再生計画の案を提出する期限が設定されます。
通常この期限は、申立から2か月後になることが多いです。
再生計画案が提出され、問題なければ、書面決議に付されます。
ここで債権者の頭数の半数以上、もしくは債権額の半額以上を占める債権者から反対の意見が出た場合には、破産手続きは廃止となってしまいます。
通常、この期間は1か月ほど取られることが多いです。
書面決議で反対が半数とならなければ、裁判所が法律上の問題ないかを審査し、問題なければ再生計画の認可を決定します。
通常、この期間は2週間程かかることが多いです。
認可決定がなされると、その旨が官報にのります。そして、官報に載ってから2週間が認可決定に対して問題があるとして債権者等が抗告することができる期間になるので、官報に載ってから2週間の間に債権者等から抗告がなされない場合には、再生計画は、もう覆されることがなくなります。
これを確定といいます。
認可決定から確定までは通常1か月程度かかることが多いです。
確定後から再生計画に従い、返済等を行っていくことになります。
以上のとおり、小規模個人再生の手続は、半年から1年ほどかかることが多いです。
個人再生と管理費の滞納
前回に続き、個人再生の話です。
個人再生は、再生計画に住宅資金特別条項を付すことによって、住宅ローンの返済を特別扱いすることによって住宅ローンの支払いを継続し、住宅が競売等に付されるのを避けることができます。
ただ、住宅資金特別条項を付すためには、一定の条件を満たす必要があります。
この条件の一つに、後順位の担保権が付されていないことというものがあります。
通常、住宅ローンがついている住宅をさらに担保に付するというのは稀なので、ほとんど問題になることはないように思えます。
しかし、マンションについては、これが問題なる場合が生じます。
それは、管理費の滞納がある場合です。
管理費については、区分所有法において、当該マンション等について先取特権を有するとされています。これは、住宅が競売等になった場合、優先的に弁済を受ける権利があるということで、担保権に該当します。
そのため、マンションについては、管理費等に滞納があると、住宅資金特別条項を付すことができない可能性が生じます。
ただ、現時点で管理費の滞納等があったとしても、親族等の援助によって申立までに滞納を解消するなどすることができれば、住宅資金特別条項を付す形で、個人再生の申し立てを行っていくことも可能です。
詳しくは弁護士にご相談ください。
「個人再生事件における諸論点」メモ2
「個人再生事件における諸論点」メモ 2
前回の続きです。
最近、遅ればせながら『事業再生と債権管理』の174号(2021年10月5日号)のパネルディスカッション「個人再生事件における諸論点」を読み、個人再生をやっている弁護士として、示唆に富むところがあったので、メモ代わりにブログに残しておこうと思います。
個人再生は、住宅ローンであれば特別扱いすることができます。ただ、特別扱いすることができる住宅ローン(法律上は、「住宅資金貸付債権」といいます。)に該当するかどうかは法律で定まっています。
前回は、住宅購入の際の諸費用等もローンを組んで支払った場合、どのような影響がでるかについてメモを残しましたが、今回は、諸費用以外に支払ったものが含まれている場合です。
例えば、住宅ローンを組む際に、前に購入した家の住宅ローンが残っている場合、その残りの分も借り換えをして住宅を購入した場合はどうなるでしょうか。
これについてもパネリストの意見は分かれているようで、住宅資金貸付債権について、過去に居住の用に供していた建物の購入代金についても住宅資金貸付債権に含めてもよいのではないかとの意見と、法律の解釈上難しいのではないかとの意見に分かれているようでした。
裁判官のパネリストのからは、このような事案でも金額の多寡や貸付金額全体に占める割合などの諸事情を考慮して判断することになるが、住宅資金貸付債権該当し、住宅ローン特則が認められることはありうるとのことでした。
実務上も、住宅資金貸付債権に該当するかどうかが問題になる事例は少なくありません。
私も、上記と類似の事例は扱ったことがあり、住宅資金貸付債権と裁判所に認めてもらえた例もあれば、住宅資金貸付債権と認めてもらえずに、その部分のみ親族等に代わりに支払ってもらい、抵当権を解除したりしたこともあります。
このような事例は、パネリストの間でも意見は分かれているものになります。まずは、弁護士に相談されるのをお勧めいたします。